思考実験

workspace coma

第1章 サービスの正体

シェアするワークスペース。
駅から近いシェアオフィスではなく、安価なコワーキングスペースでもない。

ここが目指しているのは、「ワークするために必要なあらゆるものをシェアする」場所です。
机やWi-Fiだけでなく、クルマも、プリンターも、数字の知識も。
フリーランスが未来へ進むために欠かせないリソースを、この拠点に集めて分かち合う。

だからcomaには「固定席」しかありません。
ここに集うのは、独りで挑む人です。
独りだからこそ、自分の時間に集中できる。
独りだからこそ、選んだ道を歩む覚悟が生まれる。

けれど、独りであることは、不安定であってはいけない。
comaには、安心感を支える仕組みがあります。
社会保険に加入できる仕組み。
事業の意思決定や振り返りに役立つ数字の視点。
そして、クルマやモニターなど、日々の仕事に直結する小さな資源。

独りで挑みながら、安心を分かち合う。
その大局の中にこそ、comaの本当の価値があるのです。

comaは、単なるスペースの貸し出しではありません。
「独立した個人が、組織の強みを享受できる拠点」
それがcomaというサービスの正体です。

第2章 思想

私は会計事務所で数字を扱い、ベンチャー企業で事業の変化を間近に見てきました。
経理の仕事は、正確に記録を残すことが中心です。
けれど私が本当に惹かれてきたのは、数字を未来に活かす瞬間でした。

「この投資をするかどうか」
「どのサービスを続け、どこを手放すか」
「計画と現実の差をどう読み解くか」

そうした意思決定や振り返りの場面で、数字は単なる記録ではなく「判断のよりどころ」になります。
私はそこにこそ、数字の本当の意味を感じてきました。

会計事務所時代

会計事務所にいた頃、私はどこかで事業会社の経理を軽く見ていました。
「経理は税務申告のためのベースを作る仕事」という感覚があって、税理士事務所にいる自分のほうが上だと、なんとなく思っていたのです。

けれど、経理代行を任されたときに気づきました。
経理は外から指示を受ける存在ではなく、事業を動かすメンバーの一部として機能している。
その実感を持てたことが、私にとって大きな転機になりました。

ベンチャー企業時代

ベンチャー企業に入ると、急成長の景色を目の当たりにしました。
コンサルタントも入り、学びの多い環境でしたが、1社目では休みなく働き続け、ふと「何のために働いているのか」と見失うほどでした。

2社目では逆に、フルタイムの契約でありながら主なミッションは資金調達だけ。
それ以外の時間は「せっかくフルタイムで雇っているのだから、何かやっていて」という雰囲気で、結局は誰でもできることを埋めるような働き方でした。

これはきっと、現場では“あるある”なのだと思います。
ある程度のスキルを持つ人を「週1だけ来て」と使うのは難しい。
私が「週1日出社の経理部長」という働き方を思いついたのは、その違和感の裏返しでした。

独立後

独立してからはIndeedで契約先を探し、がむしゃらに応募し続け、なんとか5社・週5日を埋めました。
けれど、その働き方ではすぐに身体を壊しました(笑)。

そして、赤字続きの会社では資金調達もできず、私のコストが負担になる現実。
伸びている会社では、週2日の関与でも追いつかないほど業務が膨らんでいく。

そうやって紆余曲折を経て、今は2社と契約し、週4日働く形に落ち着きました。
その中で感じたのは、
数字を見るのも、営業するのも、現場に立つのも全部ひとり。実はそれが面白みでもあるけれど、同時に独りの弱みもある。

私は思うんです。
その弱みを受け止めて、改善していける仕組みが必要だと。
フリーランスや小さな事業者こそ、安心できる仕組みを持ちながらリスクを取るべきです。

comaが提供する社会保険サービスも、そのための一歩です。
不透明な部分があるからこそ、しっかり話し合いたい。
制度を正しく理解し、安心感を得たうえで取り組んでほしい。
それが私の考える、このサービスの意味です。

第3章 場所

ここは東海道五十三次・京方見附のすぐ近く。
人生や事業の“出入口”にふさわしい、はじまりの拠点です。

大磯町には独特の空気があります。
明治の政治家や文人が足を運んだ歴史。
海と山に囲まれた自然の豊かさ。
静けさと人の気配が同居する不思議な感覚。
ただ便利な町ではなく、歴史と感覚が重なる場所です。

comaが根を張るのは、大磯町高麗3-5-7。
番地まで具体的に示せるのは、ここが「どこでもいい」場所ではないからです。
この土地に立ったときの感覚が、私にとっては何より大切でした。
過去の人々がここを通り抜け、出会い、別れてきた。
その延長線上に、いまフリーランスや小さな事業者が集う。
そう考えると、自然と「ここでやろう」と思えたのです。

近くには、平塚宿の「京方見附」があります。
江戸から京へと向かう旅人が必ず通った出入口。
そこから眺める高麗山の姿は、今も変わらず残っています。
変わらぬものがあるからこそ、新しい取り組みを重ねる意味が生まれる。
comaはその延長線上にある拠点です。

第4章 仕組みと運用

comaは、5席だけの拠点です。

少人数にしたいからそうしたわけではありません。
コンセプトが決まった瞬間に、私は思いました。
「席数で採算を考えなくていい」と。
だからこそ、5席という規模に縛られず、この空間をデザインできるのです。

もちろん、少なさには弱みもあります。
5席で互いを理解しようとしたら、問題が起これば一気に居心地が悪くなる。
だからこそ、距離感をどう設計するかが重要です。
べったりではなく、ちょうどいい距離感。
そのためには、こちらからもしっかりと人を選定する必要があります。

「選定」と言うと偉そうに聞こえるかもしれません。
けれど、これは線引きや排除のためではなく、コンセプトに共感いただけるかどうかを確かめるためです。
だから契約前には必ず、何度も話を重ねたいと思っています
この場所が、その人にとって本当に安心できる拠点になるのか。
お互いにとって最適かどうか。
そのプロセスを大切にしていきたいのです。

そしてもうひとつ大切にしていることがあります。
「5席だからこそ柔軟に」という姿勢です。
ルールは最小限にとどめ、意見を募りながら形を変えていく。
小さな規模だからこそ、余白を残し、軽やかに動ける。
その柔軟さこそが、comaにしかない強みです。

comaは、ペルソナから逆算して設計した拠点ではありません。
「どんな人を集めたいか」ではなく、「この場所で私がやること」から始まっています。

ここに共感してくれる人が偶然いるかもしれないし、いないかもしれない。
私は、ちょうどいい距離感を大事にしながら、これから形を作っていきます。

第5章 未来のビジョン

comaは、まだ完成していない場所です。
けれど、それは欠点ではなく、未来への余白です。
利用者とともに形を変え、育てていける拠点だからこそ、新しい動きが生まれていくと信じています。

私が提供したいのは、短期的な利益ではなく、長期的な利益です。
ここで言う利益とは、お金のことだけではありません。
「安心して働ける時間」や「信頼できる関係」もまた、利益のひとつです。
それを積み重ねていくことが、最終的に数字にも反映されていく。
そんな未来をcomaで実現したいと思っています。

comaのシェアは、大きな仕組みではありません。
むしろ「なくても困らないけれど、あると助かる」ものばかりです。

  • プリンター:月に数回しか使わない人でも、いざ必要なときにすぐ出力できる。
  • モニター:普段はノートPC一台で十分。でも資料作成や分析のときには大画面が役立つ。
  • クルマ:毎日ではなくても、急な移動や荷物運びで「あると助かる」存在になる。
  • 知識や制度の情報:社保や資金繰りなど、検索だけでは不安が残るテーマを、互いにシェアして安心を得られる。
  • 土日の会議室:友達を気軽に呼べる場所として、自宅より使いやすい。小さな集まりや打ち合わせにも気楽に使える。
  • 郵便や来客の対応:自宅では落ち着かないことも、この場所なら安心して任せられる。

どれも主役になるような仕掛けではありません。
けれど、ちょっとしたときに「助かったな」と思える。
その積み重ねが、日々の働き方を少し軽くしてくれます。

結び(エピローグ)

comaは、大きな組織ではありません。
駅から近いわけでもなく、便利さを誇る場所でもない。
ただ、ここには独りで働く人を支える安心感があります。
そして、それを共に分かち合える環境があります。

私は思うんです。
事業にとって一番大切なのは、短期的な成果ではなく、長期的に積み重なる利益です。
その利益とは、お金だけではなく、関係や信頼や安心のこと。
それを形にできるのが、comaという拠点だと信じています。

ここにあるのは、5席
けれど、その小ささを弱みとせず、柔軟さと余白に変えていきたい。
安心感をベースに、それぞれが無理なく仕事を続けられる場所にしたい。

そして、この場所はまだ完成していません。
だからこそ、関わってくれる人と一緒に形を変え、育てていきたい。

自宅兼事務所でも十分やっていける。
わざわざ事務所を借りる必要はないのかもしれない。

それでも、「たまに役に立つ」場所があれば働き方は少し楽になる。
comaは、そんな選択肢のひとつでありたいと思っています。